五島列島沖の深海沈む残骸が巨大潜水艦「伊58」とほぼ特定
2017年5月に長崎県の五島列島沖の深海で発見された戦時中の巨大潜水艦と思われる残骸を特定するプロジェクトで、人間魚雷「回天」を載せていて、広島・長崎に落とされた原爆を運んでいたアメリカの重巡洋艦「インディアナポリス」を撃沈したことで知られる「伊58」がほぼ特定されたようです。
伊58とは
伊号第五十八潜水艦(伊58)は1944年に竣工した巡潜乙型潜水艦。人間魚雷「回天」を搭載し、広島・長崎に投下された原爆を搬送後、帰路についていた重巡洋艦「インディアナポリス」をパラオ沖で撃沈したことで有名。
傷つくことなく終戦を迎えたが、1946年アメリカ軍による日本海軍の潜水艦23隻の海没処分「ローズエンド作戦」により、長崎県の五島列島沖に沈められた。
日本海軍沈没潜水艦調査プロジェクト(伊58呂50特定プロジェクト)
2015年に海上保安庁の「海洋」により、深海に沈む潜水艦群の船影が発見された。
それを2017年、水中ロボットの権威 浦 環氏の立ち上げた「ラ・プロンジェ深海工学会」の推進で有線水中ロボットカメラ(ROV)による調査を決行。
5日間におよぶ調査の結果、伊58、呂50を含め多数の潜水艦を特定。戦後70余年たって戦争の形跡をが少なくなっていく中、貴重な資料として注目されます。
ニコニコ生放送で実況中継
この水中調査の様子は、ドワンゴと情報通信研究機構(NICT)の協力のもと5日間、ニコニコ生放送で実況生中継されました。普段ダイバーでもない限り見れない水中の様子がお茶の間で見れるようになっています。
※放送後もニコニコプレミアム会員になれば、タイム視聴できます。
海中の実況生中継は、2013年に有人潜水艇「しんかい6500」がケイマン海溝熱水地帯潜水を行った時もニコニコ生放送で放送されました。今回は無人の水中ロボットによる中継です。
戦争を考え直す契機に
伊58を含む潜水艦群は海底にむかって、縦に突き刺さるように沈んでいて、それはまるで海の中の墓標のようです。
実戦配備中に沈めた戦績は「インディアナポリス」1隻のみ。海の特攻隊ともいわれる人間魚雷「回天」を搭載して幾多の若者の想いが込められた伊58。米軍にとって象徴的な戦艦を沈めたことにより、アメリカでも注目度が高いこの潜水艦の姿を、しっかり目に焼き付けることで戦争を考える契機にしたいものです。
こちらは瀬戸内海に残された戦争の記憶